ホーム › 読みもの › AIを導入しても社長の仕事が減らない3つの理由|中小企業のAI活用で先に見直すこと › 中小企業の業務効率化|人を増やす前に、どこから改善すればいいか

結論からいうと、中小企業の業務効率化は、ツールを選ぶ前に「どの仕事を減らすと、利益・顧客満足・社長の時間に効くか」を決めることから始めます。
時間がかかっている仕事から順に手を付けると、効率化はできても、会社はあまり楽になりません。
今の人数のまま回したいなら、
やめる → 減らす → まとめる → 任せる → 仕組みにする
の順で、仕事を軽くしていきます。
この記事では、中小企業が業務効率化を進める手順と、「どこから改善すればいいか」を決める基準を、私自身の経験とあわせて紹介します。
業務効率化とは、同じ成果を、より少ない時間・手間・お金で出せるように、仕事のやり方を変えることです。
社員が数名〜20名ほどの会社では、一人が営業も事務もお客様対応も担当していることがよくあります。
そのぶん、ひとつの仕事が詰まると会社全体が止まりやすい。
その一方で、決める人と動く人の距離が近いので、「変える」と決めたらその週から試せます。
規模の小さい会社ならではの動きやすさです。
人を増やして回すことも、簡単ではなくなっています。
帝国データバンクが2026年7月17〜31日に全国の企業(規模を問わない調査で、有効回答1万518社)に聞いたところ、正社員が不足していると答えた企業は51.3%で、7月としては4年続けて半数を超えました(帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2026年7月)」)。
大きな会社も含めた数字です。
少人数の会社では、一人欠けたときに止まる仕事がさらに増えます。
今の人数のままでも回る形に、仕事のほうを組み直す。
これが、業務効率化のいちばんの目的だと私は考えています。
一人に仕事が集まって、その人がいないと止まる状態をどうほどくかは、こちらにまとめています。
→ 属人化をなくすには?「あの人しか分からない」を仕組みにする手順
私は、次の5つの順番で進めます。
業務改善の考え方として知られる「ECRS(排除・結合・交換・簡素化)」とも近い順番です。
大事なのは、「任せる」より先に「やめる」「減らす」を見ることです。
いらない仕事を人やツールに渡しても、会社全体の手間は減りません。
渡した先で、同じムダが続くだけです。
国の白書にも、近い考え方が出てきます。
2026年4月に公表された中小企業庁の「2026年版 中小企業白書」は、生産能力を増やすための設備投資を分析し、「投資前の業務プロセスの見直し等を行った上で、計画的な設備投資を行うことの重要性」を挙げています。
ここでいう業務プロセスの見直しは、今の業務の状況を明らかにして、改善策を考え、実行することです。
(白書「重要な取組1-⑤」図2。対象の設備投資にITツールやAIは含みません。元の調査は帝国データバンク「令和7年度中小企業の経営課題と事業活動に関する調査」。出典:中小企業庁調査室「2026年版 中小企業白書・小規模企業白書の概要」(2026年6月))
仕事を書き出したあと、どこに振り分けるかは、こちらで詳しく書いています。
→ 業務棚卸しのやり方|AIに任せる仕事・人に任せる仕事を5つに分ける
書き出した仕事のうち、どこから手を付けるか。
つい「一番時間がかかっている仕事」から選びたくなりますが、私は次の3つで見ています。
1つ目は、利益。
この仕事は、売上や利益につながっているか。
つながっていないのに、時間やお金がかかっている仕事から見直します。
2つ目は、顧客満足。
お客様の「買ってよかった」に関わっているか。
お客様に関わらない社内の作業は、改善の優先度が高くなります。
3つ目は、社長の時間。
この仕事のために、社長の確認や判断が何回入っているか。
毎回、社長のところで止まる仕事は、早めに手を付けます。
時間がかかっていても、お客様の満足に直結している仕事は、急いで削りません。
反対に、短い作業でも、毎日社長の確認待ちで止まっている仕事は、優先して見直します。
企業診断で経営者の方にお話を伺うと、売上や顧客数はきちんと把握されています。
数字は持っている。
決まらないのは、順番です。
全部を同時に変えようとすると、どれも中途半端になります。
この3つで、最初の1つを決めるところからです。
社長の確認で止まる仕事を減らすと、最後に何が社長に残るのか。
それは、こちらで書いています。
→ 社長にしかできない仕事は、思っているより少ないかもしれません
ツールや外注は、業務効率化の有効な手段です。
ただ、仕事の流れが社長を通る形のままだと、作業は減っても、社長は楽になりません。
ツールの手前でつまずく会社も少なくありません。
同じ白書では、2019年以降の省力化投資のなかでAIの活用に「取り組んでいない」と答えた事業者3,888社に理由を聞いています(複数回答)。
いちばん多かったのは「活用する業務がイメージできていない」の63.4%でした。
(白書「重要な取組1-⑧」図1(2)。白書の「中小企業」には数十〜数百人規模の会社も含まれます。出典:中小企業庁調査室「2026年版 中小企業白書・小規模企業白書の概要」(2026年6月))
どの仕事に使うかが決まっていないと、ツールは選べません。
仕事を書き出して、減らす仕事を決めるのが先になるのは、そのためです。
私自身、物販をしていた頃に、外注さんに20名ほど入ってもらっていました。
受注が入るたびに、外注さんに依頼して、確認の結果をもらって、買い付けて、送金の連絡、発送の連絡をもらう。
それとは別に、秘書さんとのやりとりや、出品をお願いする外注さんとのやりとりもありました。
自分で作業はしていなくても、気持ちはずっと持っていかれていました。
作業は人に渡せていました。
でも、判断は私のところに戻ってきていました。
その後、まとめ役の方にリサーチと買い付けの依頼を任せてから、仕事は楽になりました。
お金の判断は任せませんでした。
実際に会ったことのない海外の方で、私でないと不安だったからです。
何を任せて、何を自分に残すか。
ツールを入れても、外注を増やしても、この線引きがないままだと、判断は社長に戻ってきます。
このときの話は、こちらに詳しく書いています。
→ 外注化で社長は楽になる?外注約20名にお願いして分かった「任せ方」と4つの仕事の分け方
あります。
お客様の満足に直結している仕事は、効率化の対象にする前に、慎重に見ます。
たとえば、
このあたりを「時間がかかるから」と削ると、短期的には楽になっても、お客様の満足が下がるおそれがあります。
業務効率化の目的は、手間を減らすことそのものではありません。
減らした手間の分を、お客様と商品に戻すことです。
私も、自社の仕事を見直したときに、お客様への個別のお返事や、何をやるか・やめるかを決めることは、自分に残しました。
空いた時間は、何もしなければ別の細かい仕事で埋まりがちです。
だから、戻す先を決めておくことをおすすめしています。
私の場合、一番楽になったと感じたのは、広告の運用とリサーチでした。
以前は外注していた広告運用を、ツールやAIをつないで自分の会社で回せる形にしたことで、分析して直すまでを一人ですぐできるようになりました。
LPやホームページも、自分で直して公開できるようになりました。
その分の時間を、私は自社だけでなく、お客様の仕組みづくりに回しています。
AIを使った業務効率化の進め方と具体例は、こちらにまとめています。
社長の時間を戻す先は、会社によって違います。
たとえば、次のような時間です。
「空いたら考える」より、効率化を始める前に、どこに戻すかを決めておくことをおすすめします。
あります。
ある会社では、「AIを導入したい」というご相談から始まりました。
ところが、チームの方にもお話を伺うと、詰まっていたのは利益の構造、商品の設計、顧客情報の管理、そして社長にしかできない仕事の整理でした。
別の方からは、「AI秘書を使って、ツールの操作を減らしたい」というご相談をいただきました。
「何を続けるのか」「何をやめるのか」「何を手放すのか」を一緒に整理していくと、本当に手を入れるべきだったのは、商品の設計と、売れるまでの流れのほうでした。
体調がおかしいと感じても、いきなり手術はしませんよね。
まず今の状態を知るところからです。
業務効率化も同じで、作業を速くする前に、会社のどこで止まっているかを知ることが先です。
| 疑問 | 答え |
|---|---|
| 中小企業の業務効率化は何から? | ツール選びより先に、減らす仕事を決める |
| どんな順番で進める? | やめる → 減らす → まとめる → 任せる → 仕組みにする |
| どこから改善する? | 利益・顧客満足・社長の時間の3つで、最初の1つを選ぶ |
| ツールや外注で楽にならないのは? | 判断と確認が社長に戻る流れのままだから |
| 削ってはいけない仕事は? | お客様の満足に直結している仕事 |
| 空いた時間は? | 始める前に、お客様・商品・方向を考える時間に使うと決めておく |
A.誰が、何に、どれくらい時間を使っているかを書き出すことです。
書き出したうえで、やめられる仕事がないかを先に見ます。
利益・顧客満足・社長の時間の3つで見て、利益にも顧客満足にもつながらないのに手間がかかっている仕事、毎回社長の確認で止まる仕事から改善します。
A.人に任せる前に、やめる仕事と減らせる仕事を決めます。
そのうえで、毎回同じ手順で起きる仕事は仕組みにし、判断基準を言葉にして渡せる仕事から、人や外注、AIに任せていきます。
A.作業は減っても、確認と判断が社長に戻ってくる流れが変わっていないことが多いからです。
何を任せて、何を社長に残すかの線を引くと、戻ってくる確認を減らせます。
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