
「これは私にしかできない」
私自身、以前はかなりそう思っていました。
結論からいうと、社長にしかできない仕事は、会社が進む方向を決めること、答えのない判断をすること、その結果に責任を持つことの3つです。
「私にしかできない」と感じている仕事も、工程に分けてみると、社長が必要なのは一部だけということがよくあります。
この記事では、仕事を分解して「本当に社長に残るもの」を見極める方法と、任せたはずの仕事が社長に戻ってくる理由を、私自身の経験とあわせて紹介します。
社長の役割は、会社で一番たくさん作業することではありません。
社長にしかできない仕事は、次の3つです。
1つ目は、方向を決めること。
何を伸ばして、何をやらないか。
誰に、何を、いくらで届けるか。
会社の行き先を決める立場にいるのは、社長だけです。
2つ目は、答えのない判断をすること。
前例のない投資、撤退、値上げ、採用。
正解が分からないことを、最後に選ぶ仕事です。
判断の材料を集めるのは任せられても、選ぶところは任せられません。
3つ目は、その結果に責任を持つこと。
うまくいかなかったときに引き受けて、次の手を打つ。
責任だけは、社員にも外注先にもAIにも渡せません。
ただ、この3つが分かっても、明日からの自分の仕事のどれを手放せばいいかは、すぐには分かりません。
「方向を決める」と「メールを返す」は、社長の一日のなかで混ざっているからです。
小さな会社では、社長が一番仕事ができることも多いと思います。
営業もできる。
文章も書ける。
お客様対応もできる。
だから、何でも自分でやれてしまう。
人に説明するより、自分でやったほうが早い。
これが毎日積み重なると、社長の一日は作業で埋まっていきます。
私も2019年ごろは、集客の仕組みはできていても、広告・メルマガ・LINE・お客様対応・商品の改良を、ほぼ一人で回していました。
例えば「営業」という仕事があります。
営業は社長しかできない。
そう思っていても、分けてみると、こうなります。
| 営業の工程 | 社長が必要か | 渡し先の例 |
|---|---|---|
| 見込み客を探す | なくてもよい | AI・仕組み(条件に合う会社を集める) |
| 会社を調べる | なくてもよい | AI(1社ごとの仮説を下書き) |
| 連絡文を作る | 型を決めるのは社長 | AIが下書き → 社長が確認 |
| 日程調整する | なくてもよい | 予約カレンダー・人 |
| 事前資料を作る | なくてもよい | AI・人 |
| 商談する | 会社による | 社長が出るか、任せた人が出るかを決める |
| 提案書を作る | 最後の判断は社長 | AIや人がたたき台 → 社長が決める |
| フォローする | なくてもよい | 決まった流れの配信・人 |
この中で、本当に社長しかできないのはどこでしょう。
商談や最終提案には、社長が出たほうがいい場面があるかもしれません。
でも、リサーチや資料作成まで社長がする必要はありません。
私は業務を見るとき、なるべく細かく分けます。
丸ごと「私しかできない」ではなく、どの部分なら渡せるかを見る。
人に渡す。
AIに渡す。
テンプレートにする。
なくす。
そうすると、社長がやるのは最後の確認と判断だけ、ということもあります。
業務の分け方そのものは、AIに任せる仕事と人に残す仕事の分け方で、書き出し方から紹介しています。
私の会社でも、集客から成約までの仕事を一つずつ分けて、AIと仕組みに移してきました。
移した仕事は41あります。
記事やSNSの下書き、営業先のリスト集め、登録してくださった方への配信、毎朝の状況のまとめなどです。
それでも、移さずに私に残しているものがあります。
並べてみると、最初の表の「方向を決める・答えのない判断をする・結果に責任を持つ」と同じところに残っています。
社長にしかできない仕事は、最初から探すより、ほかを渡していって最後に残ったものを見るほうが、はっきりします。
企業診断のフィードバックは、今も私がしています。
これは「社長にしかできない」からではなく、自分で持つと決めている仕事です。
自分しかできない仕事は、最後に残せばいい。
私はこう考えています。
順番は、分解する → やめられるものを消す → AIや仕組みに渡す → 人に任せる。
それでも残った仕事が、本当に社長にしかできない仕事です。
残すか渡すかで迷ったら、分けた工程の一つひとつに、次の3つの問いを当てます。
1と2が「いいえ」で、3が「はい」の工程は、社長でなくても回ります。
まだ判断基準を言葉にしていないだけの仕事も、ここに入ります。
言葉にしてから渡します。
左の列に残ったものも、結果の責任は社長が持ったまま、作業だけ渡せることがあります。
「営業」「採用」「お客様対応」のような大きな単位のままでは、どれも「私にしかできない」に見えてしまいます。
分けてから問いを当てると、見え方が変わります。
渡すと決めた工程を、そもそも続けるのか、誰がやると一番いいのかの決め方は、社長の仕事は、AIの前に見直すに書きました。
任せたはずの仕事なのに、気持ちや判断が社長から離れない。
私自身も経験しています。
物販をしていたころ、1日に100〜200品を扱い、外注さんを20名ほどお願いしていました。
まとめ役の秘書さんもいました。
受注が入るたびに、外注さんへの依頼、確認の結果の受け取り、買い付け、送金の連絡、発送の連絡、という流れが回っていました。
作業からは離れられました。
でも、気持ちはずっと持っていかれていました。
お金の判断は、最後まで自分に残していました。
まとめ役の秘書さんは海外の方で、実際に会ったことがなかったので、そこは私でないと不安だったからです。
そこで変えたのは、リサーチと買い付けの依頼を、まとめ役の方に任せたことです。
お金の判断は自分に残したまま、「任せるのはここまで」と決めました。
仕事は楽になりました。
どこまでを任せて、どこからを自分が持つのか。
私の場合は、その線を決めたことで楽になりました。
AIでも、似たことがありました。
「良い広告コピー」を言葉にできていなかったときは、AIに書かせても使えるものになりませんでした。
「スクロールを止める1行目」「比べられないための2行目」と分けて言葉にできたとき、はじめて渡せました。
渡せるかどうかを分けたのは、AIの性能ではなく、判断基準が言葉になっていたかどうかでした。
仕事を手放す前に、次の3つを書き出しておくと、任せた先が迷いにくくなります。
AIで業務を減らしたのに社長が楽にならない理由は、AIを導入しても、社長の仕事が減らない3つの理由でもくわしく書いています。
何年も前から知っている経営者の方から、伴走のご依頼をいただいたことがあります。
最初のご相談は「AIを導入したい」でした。
でも、チームの皆さんからお話を伺うと、整理が必要だったのはAIではなく、利益の構造、商品の設計、顧客情報の管理、そして社長にしかできない仕事の整理でした。
一つずつ整理していったところ、「今やるべきことが見えました」と言っていただけました。
AIや人に渡す前に、社長が何を持っていて、何を手放せるかを見る。
ここを飛ばすと、ツールを入れても、人を増やしても、社長の忙しさはあまり変わりません。
業務効率化をどこから始めるかは、AIを用いた業務効率化の進め方にもまとめています。
「社長にしかできない」わけではなくても、社長が自分で持つと決めていい仕事はあります。
渡せるかどうかではなく、社長が持つと選んでいるかどうかの違いです。
大事なのは、何となく抱えているのではなく、「これは自分で持つ」と決めて持っていることです。
決めて持っている仕事は、ほかの仕事を手放す邪魔になりません。
| 疑問 | 答え |
|---|---|
| 社長にしかできない仕事とは? | 方向を決める、答えのない判断をする、結果に責任を持つ |
| 「私にしかできない」仕事はどうする? | 工程まで分解すると、社長が必要なのは一部だけのことが多い |
| どう見極める? | 工程に分けて「方向が変わるか・誰かが選ぶ必要があるか・判断基準を言葉にして渡せるか」を当てる。残ったものが社長の仕事 |
| 任せても気持ちや判断が離れないのはなぜ? | どこまで任せるかの線と判断基準が、決まっていないから |
| ほかに手元に残していいものは? | 自分で持つと決めた仕事(社長が出ることに意味のある商談など) |
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今の仕事を書き出すところから、一緒に見ていきます。
方向を決める、答えのない判断をする、結果に責任を持つ、の3つです。
それ以外の作業は、工程に分けると人やAI、仕組みに渡せる部分が見つかります。
悪いことではありません。
人数が少ない会社では、社長が現場に入る場面はあります。
全部を抱えるのではなく、どの工程を自分が持つかを決めて、それ以外を手放していけば十分です。
どこまで任せるかと判断基準を決めないまま、仕事を丸ごと渡すことです。
任せた先が迷うたびに、判断が社長に戻ってきます。
人に渡す前に、「やめる」と「AI・仕組みに渡す」を先に考えます。
毎回同じ手順の仕事は、判断基準を言葉にできれば、AIや決まった流れの配信、予約カレンダーなどに渡せます。
任せた仕事を一つ選び、「何ができたら完了か」「迷ったら何を優先するか」「どこから先は相談してほしいか」の3つを書いて渡してみてください。
線より手前の判断は、任せた先に預けます。
ここまで読んでくださって、ありがとうございます。
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