ホーム › 読みもの › 会社の強みの見つけ方|「うちには何もない」会社に眠っている6つの資産 › 数字はあったのに、赤字の場所が見えなかった|30年運賃を据え置いた運送会社が、ルート別の原価で利益を約1,000万円増やした事例
※この記事は、当社の支援事例ではありません。公的支援機関の公開事例集に掲載された支援事例をもとに、
ストック経営の視点から考察したものです。事実は事例集の記載によります。
運輸業
従業員20名以下
毎月、数字はつけている。それなのに、どこで損をしているのかが分からない。
そんな状態に、心当たりはありませんか。
今日は、数字を「取る」ことはできていたのに、
「見る単位」がずれていたために赤字の場所が見えなかった会社の事例です。
見る単位を変えただけで、
30年動かなかった運賃が動きました。
地方で、トラック10台ほどを持つ運送会社です。
祖父の代に創業し、今の社長は三代目。農機具や液体、長いものなど扱いの難しい荷物を運び、
好立地の倉庫を活かして、
保管から輸送まで一貫して請け負ってきました。
長年の営業で、仕事の量は安定していました。ところが、運賃は30年以上、ほとんど見直せていません。
人件費や燃料費が上がり、
ドライバーの働き方が変わる「2024年問題」も重なって、
ある年の決算で営業利益が約900万円の赤字になりました。
社長は、値上げが必要なことは分かっていました。
でも、荷主(荷物を預けてくださる取引先)の立場は強く、
「値上げを切り出したら、他社に乗り換えられるかもしれない」という不安が、
いつも交渉の足かせになっていたそうです。
この会社は、何もしていなかったわけではありません。
トラックごとの月の収支を、自分たちで出していました。
ただ、それで分かるのは「今月は赤字だった」ということまで。
どの取引先の、どのルートが利益を削っているのかは見えませんでした。
1台のトラックは、
いくつもの取引先の仕事を運んでいるからです。
そこで、運送業の経験を持つ公的機関の専門家と一緒に、
次のように進めています。
ルートごとに並べると、
利益の出ていないルートがひと目で分かるようになりました。
そして、その資料をもとに価格を相談しています。
結果は、あるルートで約30%の値上げ。利益の出ない仕事を整理したので売上は少し減りましたが、
売上総利益(粗利)は約1,000万円増え、
売上に対する粗利の割合は25.7%から37.5%に上がりました。
数字以上に大きかったのは、社長の考え方の変化だそうです。
以前は取引がなくなることが不安だったのが、
今は「利益を確保できない仕事は、続けるべきではない」と考えられるようになった。
荷主と対等な取引先として話せるようになったと、
事例集にあります。
ストック経営では、
会社にすでにある資産を6つに分けて考えています。
顧客・取引先/蓄積データ/信用・実績/顧客の声・事例/仕組み・ノウハウ/知識・経験です。
この事例で使われていたのは、主に次の3つだと考えます。
新しい取引先を探したわけでも、
トラックを増やしたわけでもありません。
すでにつけていた数字の「見る単位」を変えたことで、
交渉の根拠が生まれ、利益が戻っています。
ここからは、事例集に書かれていることではなく、
私の考えです。
利益が戻ったあと、
私ならこの会社と次の3つを一緒に進めたいと思います。
❶ 利益の出る荷主との仕事を、深く・長くする
ルートごとの数字が見えるようになったら、
次は「利益が出ていて、長く続いている荷主」を並べます。
その荷主に、ほかにどんな荷物や困りごとがあるかを聞いていく。
新しい荷主を探すより、
すでに信頼してくださっている荷主との仕事を広げるほうが、
手間も少なく、利益も残りやすいはずです。
❷ 「保管から輸送まで」を、
替えのきかない強みとして伝える
好立地の倉庫で預かり、扱いの難しい荷物をそのまま運べる。
これは、運賃だけで比べられる会社にはない強みです。
保管と輸送をまとめて任せると、
荷主側の手間がどれだけ減るかを先に伝えておけば、
「1回いくらか」ではなく「この会社に任せたいかどうか」で選ばれやすくなり、
価格の相談もしやすくなります。
❸ ルート別の原価と交渉資料を、
AIも使って会社の資産にする
ルートごとの原価の出し方や、
荷主の担当者が社内で説明しやすい資料の作り方は、
今は社長と一部の人の頭の中にあります。
これを手順として言葉にし、
毎月の数字が自動で集まって、
AIが資料の下書きまで出す形にしておけば、
社長がいなくても同じ判断ができます。
事例集によると、
この手法は倉庫の部門にも広げる予定だそうです。
その先に、取引先の条件が外に出ないよう配慮したうえで、
同じ悩みを持つ同業の会社に向けたノウハウとして届けることもできます。
運賃を見直して取り戻した利益を、
次の売上の柱に変える一歩です。
最後に、ひとつだけ問いを置いておきます。
あなたの会社で毎月つけている数字は、
「どの取引先・どの仕事で利益が出ているか」まで見える単位になっているでしょうか。
数字を取っていても、見る単位がずれていると、
赤字の場所は見えません。
値上げの根拠は、もう社内の数字の中にあるかもしれません。
自社のどこに資産が眠っていて、何から手をつけるか。
考え方と手順を、4つの特典レポートにまとめました。
出典:公的支援機関の公開情報より引用「30年据え置かれた運賃を適正価格へ 『原価の見える化』と『根拠ある交渉』で収益構造を刷新」