ホーム › 読みもの › 会社の強みの見つけ方|「うちには何もない」会社に眠っている6つの資産 › 値上げは「まとめて」ではなく「中身ごと」に|売上の8割を占める取引先と、工賃15.2%アップを交渉した製造業の事例
※この記事は、当社の支援事例ではありません。公的支援機関の公開事例集に掲載された支援事例をもとに、
ストック経営の視点から考察したものです。事実は事例集の記載によります。
製造業
従業員20名以下
売上の多くを、ひとつの取引先に頼っている。その取引先に、値上げを切り出すのは怖い。
関係が切れたら、会社がもたないからです。
今日は、売上の約8割を占める取引先と、
関係を保ったまま価格を見直した会社の事例です。
ポイントは、値上げを「まとめて」お願いするのではなく、
売上の「中身ごと」に分けて相談したことでした。
地方で、工場の機械を動かす制御盤や分電盤をつくっている会社です。
創業は昭和54年。設計からメンテナンスまで一貫して請け負い、
機械を動かすプログラムまで組める、
ハードとソフトの両方の技術を持っています。
売上の約8割は、
大手の電気機器メーカー1社からの受託でした。
ところが、取引価格は20年近く据え置き。その会社からの売上も、
10数年前をピークに少しずつ減っていました。
仕事の量が減ると、固定費をまかなえなくなります。
赤字が続き、取引先との価格の見直しが急ぎの課題になっていました。
この会社の製品の値段は、
毎回見積をするのではなく、
決まった計算式で出していました。
「組み立てにかかる時間 × 工賃 + 自社で調達する部品代」です。
公的支援機関の専門家と一緒にこの中身を分けてみると、
ずれている場所が1つではないことが分かりました。
そこで、まとめて「値上げしてください」とお願いするのではなく、
中身ごとに分けて、
根拠を示して相談しています。
工賃は黒字に必要な最低限に利益を乗せた額に。
部品は市場価格を反映するか、
難しければ取引先から部品を支給してもらう。
メンテナンスは準備の時間を入れる。
社長自身が「なぜ赤字なのか」を理解したうえで、
説得力のある交渉ができるよう、
資料の作り方や数字の出し方、
話し方まで一緒に準備したそうです。
部品代の見直しと、
メンテナンスの準備時間は早い段階で合意。
工賃は、最初は5.2%アップにとどまりましたが、
粘り強く交渉を続け、
ある年の4月からはさらに9.5%、
もとと比べて15.2%アップで受注できるようになりました。
一方で、組み立ての時間の見直しは、
まだ交渉が続いているそうです。
全部がうまくいったわけではありません。
それでも社長は、価格を見直しながら、
取引先とのよい関係も保てていると話しています。
ストック経営では、
会社にすでにある資産を6つに分けて考えています。
顧客・取引先/蓄積データ/信用・実績/顧客の声・事例/仕組み・ノウハウ/知識・経験です。
この事例で使われていたのは、主に次の3つだと考えます。
新しい取引先を探したわけでも、
値段の決め方そのものを変えたわけでもありません。
すでにある計算式の中身を分けて見直したことで、
交渉の根拠が生まれています。
ここからは、事例集に書かれていることではなく、
私の考えです。
工賃が上がったあと、
私ならこの会社と次の3つを一緒に進めたいと思います。
❶ まだ決まっていない「組み立ての時間」を、記録で示す
交渉が続いている組み立ての時間は、
「入っていないはずだ」と言うだけでは動きにくいところです。
製品の種類ごとに、
組み立ての前後の作業まで含めた実際の時間を、
しばらく記録してみる。
数字で並べられれば、
取引先の担当者も社内で説明しやすくなります。
根拠が積み上がるほど、
交渉は「お願い」から「確認」に変わっていきます。
❷ 一貫体制と技術を、ほかの取引先にも届ける
売上の約8割が1社だと、
どれだけ根拠をそろえても、
交渉で強く出にくいのが正直なところです。
設計からメンテナンスまで任せられて、
プログラムまで組める会社は、
そう多くありません。
この強みを、今の取引先以外の会社にも伝えていく。
1社への依存が少しずつ下がれば、
今の取引先とも、
より対等に話せるようになります。
❸ 値段の内訳と交渉資料の作り方を、
AIも使って会社の資産にする
工賃・時間・部品・メンテナンスに分けて根拠を示すやり方は、
今回の交渉で社長が身につけた大切なノウハウです。
これを手順として言葉にし、
毎月の作業記録や部品の仕入れ値が自動で集まって、
AIが交渉資料の下書きまで出す形にしておけば、
次の見直しのときも、
社長がいなくても同じ準備ができます。
その先に、取引先の条件が外に出ないよう配慮したうえで、
同じように1社への依存に悩む会社に向けたノウハウとして届けることもできます。
最後に、ひとつだけ問いを置いておきます。
あなたの会社の値段は、何と何でできているでしょうか。
その中身を1つずつ分けてみると、
「ここだけは、今の実態に合っていない」という場所が見つかるかもしれません。
値上げの根拠は、もう値段の中身の中にあるかもしれません。
自社のどこに資産が眠っていて、何から手をつけるか。
考え方と手順を、4つの特典レポートにまとめました。
出典:公的支援機関の公開情報より引用「粘り強い価格交渉で工賃15.2%増を達成し 連続赤字決算から脱却」