ホーム › 読みもの › 会社の強みの見つけ方|「うちには何もない」会社に眠っている6つの資産 › 値上げできた3社に共通していたのは、「数字の見る単位」を変えたこと|公開事例で読む、値上げの根拠のつくり方
※この記事で紹介する3社は、
当社の支援事例ではありません。公的支援機関の公開事例集に掲載された支援事例をもとに、
ストック経営の視点から考察したものです。事実は事例集の記載によります。
値上げをしないといけないのは、分かっている。でも、何を根拠に切り出せばいいのか分からない。
材料費も人件費も上がり続けるなかで、
そう感じている社長は少なくないと思います。
これまで、値上げで利益を取り戻した3社の公開事例を1本ずつ読んできました。業種も規模も違う3社ですが、並べてみると、
はっきりした共通点がありました。
3社とも、新しく何かを足したわけではありません。すでに手元にあった数字の「見る単位」を変えて、
それを値上げの根拠にしていました。
| 鉄骨加工 | 運送 | 制御盤メーカー | |
|---|---|---|---|
| 困っていたこと | 鋼材が1.5倍。3期連続の赤字 | 運賃が30年以上そのまま。営業利益約900万円の赤字 | 売上の約8割を占める取引先との価格が20年近くそのまま。赤字が続く |
| 変えた「見る単位」 | 会社全体 → 工事ごと | トラックごと → 契約ルートごと | 値段ひとまとめ → 中身ごと(工賃・作業時間・部品代・メンテナンス代) |
| 結果 | 1年で約2,000万円の赤字 → 約600万円の黒字 | 粗利が約1,000万円増加 | 工賃がもとと比べて15.2%アップ(作業時間の見直しは交渉中) |
3社とも、数字そのものは前から持っていました。鉄骨加工の会社には工事ごとの材料費があり、
運送会社は毎月トラックごとの収支を出し、
制御盤メーカーは決まった計算式で値段を出していました。
足りなかったのは、数字ではなく、
その数字をどの単位で見るかでした。
会社全体やトラック1台ごとの数字では、
「今月は赤字だった」までしか分かりません。
運送会社の例が分かりやすいと思います。1台のトラックは、いくつもの取引先の仕事を運んでいます。だからトラックごとに見ても、どの取引先の、
どのルートが利益を削っているのかは見えません。契約ルートごとに分け直したことで、
はじめて「ここが赤字だ」と言えるようになりました。
鉄骨加工の会社は、
受注する前に「この仕事でいくら残るか」を出す資料をつくりました。制御盤メーカーは、
値段を工賃・作業時間・部品代・メンテナンス代に分けて、
どこが実態とずれているかを見つけました。
値上げの根拠は、
「どこで損をしているか」が見える単位で数字を並べたときに、
はじめて生まれています。
3社とも、自社の都合を伝えるだけでは終わっていません。
運送会社は、荷主の担当者が上司や決裁者に説明しやすいよう、
「なぜこの運賃なのか」を示す資料を一緒につくっています。制御盤メーカーは、
資料の作り方や数字の出し方、
話し方まで準備したそうです。
値上げを決めるのは、目の前の担当者だけではありません。担当者が社内で「これなら仕方ない」と説明できる材料を渡すことが、
交渉を「お願い」から「相談」に変えていました。
3社とも、取引先との付き合いが長い会社です。
歴史のある建物の耐震補強にも携わってきた技術。30年以上、安定して運び続けてきた実績。設計からメンテナンスまで任せてもらえる一貫体制。
こうした信用があったからこそ、
根拠を示して値上げを相談しても、
関係が切れませんでした。運送会社の社長は、
「利益を確保できない仕事は、続けるべきではない」と考えられるようになり、
荷主と対等に話せるようになったそうです。
数字(蓄積データ)は値上げの「根拠」になり、
長く続けてきた信用(信用・実績)は値上げの「土台」になる。3社とも、この2つの資産を組み合わせて使っていました。
共通点だけでなく、違いにも学びがあります。
値上げの根拠をつくることと、
取引先の偏りを少しずつ減らしていくことは、
セットで考えたほうがよさそうです。
3社の事例から、最初の一歩を3つにまとめます。
一度に全部の取引先と交渉する必要はありません。まずは、いちばんずれが大きいところ1つからで十分です。
公開事例の3社は製造業や運送業ですが、
講座やコンサルティングの事業でも、
根っこは同じです。私がこれまで個別のコンサルティングでご一緒した方の中にも、
新しく足す前に、
すでにあるものを活かして結果が出た方がいます。
業種は違っても、値段や売上の根拠は、
すでに会社の中にある数字・お客様・積み上げてきた中身にありました。
ここからは、事例集に書かれていることではなく、
私の考えです。
3社の事例で、公的機関の専門家は、
数字の見方を変えて交渉の準備をするところまで、
丁寧に伴走しています。
私ならその先で、次のことを一緒に進めたいと思います。
値上げで取り戻した利益を、
一度きりで終わらせず、
次の利益を生み続ける仕組みに変えていく。それが、ストック経営で大事にしていることです。
自社のどこに資産が眠っていて、何から手をつけるか。考え方と手順を、4つの特典レポートにまとめました。
出典:公的支援機関の公開情報より引用「見積の精緻化と価格交渉を徹底し 3期連続赤字からのV字回復を実現」「30年据え置かれた運賃を適正価格へ 『原価の見える化』と『根拠ある交渉』で収益構造を刷新」「粘り強い価格交渉で工賃15.2%増を達成し 連続赤字決算から脱却」