ホーム › 読みもの › AIを導入しても社長の仕事が減らない3つの理由|中小企業のAI活用で先に見直すこと › 社長の暗黙知を、AIに渡す方法|役割・判断基準・禁止事項の3点セット

AIに仕事を渡した。
人にも仕事を任せた。
それなのに、
「これはどうしますか?」
「この場合は、どう判断しますか?」
「最終確認をお願いします」
と、結局また社長に戻ってくる。
権限委譲が進まない会社の共通点の記事で、
戻ってきた確認は失敗ではなく、
「まだ言葉になっていない社長の判断基準が見つかった」
というサインだと書きました。
では、その暗黙知は、
どうすればAIや人に渡せる形になるのか。
A.暗黙知をそのまま渡そうとせず、
「役割」「判断基準」「禁止事項」の3つに分けて書き出します。最初から完璧を目指さず、
最近迷った判断を数件書くところから始めます。
AIにも、社員さんや外注さんにも、同じ形で渡せます。
社長にとって当たり前すぎて、言葉になっていないからです。
「なんとなく、この案件は受けないほうがいい」
「この言い方は、うちらしくない」
「今は、ここにお金をかける時期じゃない」
社長は、こうした判断を毎日しています。
でも、「なぜですか?」と聞かれると、
すぐには答えられない。
AIは、書かれていないことは分かりません。
会社の資料を全部読ませても、
「どれを大事にするか」
までは分からないままです。
私がこれを実感したのは、AIより前、
人に仕事をお願いしたときでした。
2025年、コンサルティングの事業で、
導線づくりやサービスまわりを外注さん10名ほどにお願いしたことがあります。いい方ばかりで、本当にありがたかった。
それでも、「こんなふうにアドバイスしたのですが、どう思いますか?」「原稿を書いたので見ていただけますか?」と、
意見や添削を求められることが続き、
確認と判断が私に集まって、
むしろ忙しくなりました。最後は、体制を解散しています。
振り返ると、外注さんの問題ではありませんでした。
どこまで決めてよいかを、私が言葉にして渡していなかった。
マニュアル化と段取りが足りていなかったのは、
私のほうです。
AIでも、同じことが起きます。
ツールも外注さんも、作業は引き受けてくれます。
でも、「どれを優先するか」「どこで止めるか」という判断の材料が渡っていなければ、
迷ったところで必ず社長に戻ってきます。
人数を増やすと、確認の入口も人数分に増えます。
AIを増やしても、
判断基準が書かれていなければ、
出てきたものを社長が全部見直すことになります。
だから、先にやるのは道具選びではなく、
社長の頭の中にある判断を、
渡せる形にすることです。
このあたりは、AIを入れても社長の仕事が減らない理由にも書いています。
役割が広いと、AIは何を優先すればいいか分からなくなるからです。
たとえば、
「マーケティング全般をお願いします」
と頼むと、AIは広告も、文章も、分析も、
全部を少しずつやろうとします。
そうではなく、
「広告の数字を見て、止めるか続けるかの案を出す係」
のように、1行で書ける幅にします。
私の会社でも、AIを1人にまとめず、
戦略・商品・マーケティング・広告・財務・技術・ナレッジ・朝の報告・営業の9つの係に分けています。
係が決まっていれば、渡す判断基準も係ごとに絞れます。
広告の係には広告の判断基準だけ。財務の係には、お金の判断基準だけ。
人に任せるときも同じで、
「この人には、この範囲の判断を任せる」と決めてから渡すほうが、
伝える量を絞れます。
抽象的な言葉ではなく、YESとNOの例で書きます。
「お客様を大切にする」
「品質にこだわる」
こうした言葉は大切ですが、
AIはこれだけでは判断できません。
そこで、
というように、実際にあった判断を例として並べます。
私自身の判断で書くと、たとえばこうなります。
| 場面 | 判断 | 理由 |
|---|---|---|
| 「AIを入れたい」というご相談 | AIの話の前に、今の事業の整理から始める | 本当の課題が、利益の構造や商品の設計、 社長にしかできない仕事の整理にあることが多かったから |
| 「安くすれば決まりそう」な場面 | 値下げで決めない | 安く売るために頑張るより、価値を伝えて、 高くても選ばれる形にしたいから |
| ご相談をお受けするか迷うとき | 「変わりたい」という意思がある方を優先する | 結果は、お客様と一緒につくるものだから |
「お客様を大切にする」と書くより、
ずっと迷いにくくなります。社員さんや外注さんに渡しても、同じように使えます。
もう一つ、私の会社で書いておいたのが、
「何を優先するか」の順番です。
AI同士の案がぶつかったときも、この順番で決めます。
「今月の成約を増やす案」と「お客様の満足を上げる案」がぶつかったら、
1番を優先する。
私の会社では、順番を書いてから、
AIが出してくる案の向きがそろいやすくなったと感じています。
AIや人が、そのまま手を動かせる細かさまでです。
私の会社で分かりやすかったのは、広告のコピーでした。
「良い広告コピーを書いて」と頼んでいたうちは、
出てきたものをそのまま使えませんでした。
「良い」が、私の頭の中にしかなかったからです。
それを、
のように、何をする行なのかまで分けて書けたとき、
はじめて渡せるようになりました。
渡せたかどうかを分けたのは、AIの性能ではありません。
判断基準が、言葉になっていたかどうかです。
禁止事項がないと、
AIは曖昧な場面で想定外に動くからです。
私の会社のAIの係には、
たとえば次のことを禁止しています。
どれも、私が「これだけはやらない」と決めていることです。
人に任せるときも、同じでした。
物販の事業をしていた頃、
アメリカにいる秘書さんにまとめ役をお願いし、
リサーチと買い付けの依頼は任せていました。
でも、お金の判断だけは任せませんでした。実際に会ったことのない海外の方だったので、
そこは自分に残しておきたかったからです。
「ここから先は社長が決める」という線引きも、
立派な禁止事項です。
頭の中にあるだけでは、AIも人も守れません。
書いてはじめて、守ってもらえるようになります。
最近、迷った判断から書き始めます。
いきなり全部を書こうとすると、手が止まります。
おすすめの順番は、次の4つです。
特に大事なのは、3つ目です。
断った仕事、やめたこと。
何を受けるかより、何を受けないかのほうに、
その会社らしさが出ます。
3つ書いてAIに渡す。出てきたものを見る。ずれていたら、1行足す。
AIが違うものを出してきたら、
AIを責めるより先に、
基準のほうに書き漏れがないかを見ます。
判断基準は、つまずくたびに1行ずつ増えていくものだと考えています。
言葉にする作業そのもののコツは、
暗黙知を形式知にする方法にまとめています。
私は、会社にはすでに6つの経営資産が眠っていると考えています(顧客・取引先とのつながり、信用・実績、顧客の声・成功事例、蓄積されたデータ、仕組み・ノウハウ、人に蓄積された知識・経験)。そのうち、社長の判断基準は「人に蓄積された知識・経験」です。
これを書き出すと、「仕組み・ノウハウ」に変わります。
社長の頭の中にあるうちは、社長がいないと使えません。
書き出せば、
の誰にでも、同じものを渡せます。
社長が本当に集中すべき仕事は5つあると考えていて、
これはそのうちの「人・AI・仕組みに振り分ける」仕事そのものです。
そして、確認が戻ってこなくなった分の時間を、
「戦略・優先順位を決める」ことや「商品・顧客価値を磨く」ことに戻せます。
ストック経営で大事にしている2本の柱のうち、
これはこちらの話です。
データ・専門知識・ノウハウを活かして、
人とAIが成果を出せる組織をつくる。
仕事を工程に分けて、
誰に振り分けるかの考え方は、
AIに任せる仕事・人に任せる仕事の分け方に書いています。
1つでも「していない」があれば、
そこが最初に書く場所です。
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 渡し方 | 役割・判断基準・禁止事項の3つに分ける |
| 役割 | 1行で書ける幅に狭くする |
| 判断基準 | YESとNOの実例・優先順位で書く |
| 細かさ | そのまま手を動かせるところまで |
| 禁止事項 | 「これだけはやらない」「ここは社長が決める」 |
| 始め方 | 1か月で迷った判断3件から。ずれたら1行足す |
| 資産として | 知識・経験を、仕組み・ノウハウに変える |
A.資料を読ませるだけでは足りません。
AIは、資料の中のどれを大事にするかまでは分からないからです。役割・判断基準・禁止事項の3つに分けて書き、
判断基準は実際にあったYESとNOの例で渡します。
A.最初は、この1か月で迷った判断を3件書けば十分です。
渡して、出てきたものがずれていたら1行足す、
という形で少しずつ増やしていきます。
A.使えます。
役割・判断基準・禁止事項は、
AIにも人にも同じ形で渡せます。新しく入った社員や外注さんへの引き継ぎ資料の土台になります。
書き方は、ここに書いたとおりです。
それでも手が止まるのは、
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自分の判断を振り返って言葉にする時間が後回しになるからだと感じています。
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→ 属人化をなくすには?「あの人しか分からない」を仕組みにする手順
外注さんにお願いして分かった、
「人を増やせば楽になる」が半分しか当たらない理由を書いています。
判断の理由を言葉にする作業そのものを、
発信や社員への引き継ぎにも使える形で解説しています。
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