ホーム › 読みもの › 会社の強みの見つけ方|「うちには何もない」会社に眠っている6つの資産 › 中小企業の経営改善事例集|業種別によくある課題と、実際にやったこと・結果
※この記事で紹介する事例は、
当社の支援事例ではありません。公的支援機関の公開事例集に掲載された支援事例をもとに、
ストック経営の視点から整理したものです。事実は事例集の記載によります。会社が特定されないよう、業種と規模だけを書いています。
結論からいうと、
事例を読み比べて私がいちばん感じたのは、
うまくいった会社の多くが、
新しく何かを足す前に、
すでに社内にあった数字・技術・お客様の声の「見方」を変えていたということです。
材料費が上がった。お客様が減った。仕事が1人に集中している。売上は伸びているのに利益が残らない。
私はこれまで、事業歴10年〜40年の経営者の方の仕組みづくりやWebマーケティングをご一緒してきました。業種はさまざまでしたが、
根っこにある悩みはよく似ていると感じてきました。
この記事では、公的支援機関の公開事例から、
中小企業によくある課題を7つ選び、
業種ごとに「困っていたこと」「やったこと」「結果」を並べました。それぞれに、自社に置きかえるなら最初に何を見るかを添えています。
| よくある課題 | 業種・規模 | やったこと | 結果(事例集の記載) |
|---|---|---|---|
| ① 材料費が上がっても値上げできない | 製造(鉄骨加工)・運送・製造(制御盤)/各20名以下 | 数字を見る単位を変えて、値上げの根拠をつくった | 赤字から黒字へ/粗利 約1,000万円増/工賃15.2%アップ |
| ② お客様が減って、売上が戻らない | サービス(トレーニングジム)/5名以下 | 新規を探す前に、 今のお客様向けの高単価サービスとデータの仕組み | 売上・利益がコロナ前を上回る |
| ③ 仕事が1人に集中している | 製造(設計・加工)/20名以下 | 計画づくりに必要な情報をそろえ、自動で作れる形に | 計画の時間 約40分→10分弱、売上78%増 |
| ④ 品質はいいのに、価値が伝わっていない | 食品の卸売/20名以下 | こだわりの製法を言葉にし、お客様ごとに伝え方を分けた | 共同商品の相談が来るようになり、知名度も上がった |
| ⑤ 価格で比べられ始めた | 製造(手芸用品)/50名以下 | お客様が長年言っていた要望から新製品 | 累計売上 前年同期比33%増 |
| ⑥ 事業が広がって「何の会社か」が曖昧 | 運送/20名以下 | 強みを棚卸しして言葉にし直した | 新サービスが生まれ、売上高27%増 |
| ⑦ 売上は伸びているのに利益が安定しない | 小売(食品の通信販売)/20名以下 | 追う数字を売上から利益率へ。商品ごとの値付けを見直した | 2期続けて売上増・黒字が安定 |
ここから1つずつ見ていきます。
困っていたこと
鉄骨加工の会社は、鋼材が1.5倍になり、
3期続けて赤字になりました。運送会社は、運賃が30年以上そのままで、
営業利益が約900万円の赤字。制御盤メーカーは、
売上の約8割を占める取引先との価格が20年近く変わっていませんでした。
やったこと
3社とも、新しい数字を集めたわけではありません。もともと持っていた数字の「見る単位」を変えました。
そのうえで、取引先の担当者が社内で説明できる資料にして、
値上げを相談しています。
結果
鉄骨加工は約2,000万円の赤字から約600万円の黒字へ。運送は粗利が約1,000万円増えました。制御盤メーカーは工賃が15.2%上がりました(作業時間の見直しは交渉中)。
自社に置きかえるなら
帝国データバンクの調査(2026年7月・有効回答1万518社)では、
価格転嫁率は39.9%でした。コストが100円上がっても、
販売価格に反映できているのは約40円という意味です(出典:帝国データバンク「価格転嫁に関する実態調査(2026年7月)」)。全体でみると、上がったコストの半分も価格に乗せられていません。3社の事例を読むと、その中で話を通せたのは、
根拠を数字で示せた会社でした。
3社の詳しい比較は値上げできた3社の共通点にまとめています。
困っていたこと
地方の小さなトレーニングジムです。事例集によると、会員数は安定していましたが、
コロナ禍で3分の2に減りました。採算ラインに戻すには、
新しい会員が100人必要だったそうです。
やったこと
地方の町で短い期間に100人を集めるのは、
現実的ではありません。そこで、今いる会員に向けた単価の高いサービスをつくりました。
もともと単発の個別指導を頼まれることがあったので、
求めている人はいるはずだと判断しています。設備を買い足す必要もありませんでした。
結果
直近の決算で、売上・利益ともにコロナ禍の前を上回りました。事例集では、個別指導は数カ月先まで予約が埋まり、
会員数も戻りつつあると書かれています。最初は高すぎて受け入れてもらえないのではと戸惑ったものの、
募集したらすぐに定員が埋まった、
という社長の声も載っていました。
自社に置きかえるなら
困っていたこと
設計から加工・溶接までを手がける製造業の会社です。生産管理のシステムを入れたら、
工程や原価は見えるようになりました。ところが、入力や集計の時間が増え、
とくに生産計画づくりが重くなりました。担当者ごとに作り方もばらばらで、
ほかの改善に手が回らなくなっていました。
やったこと
いきなり道具を入れたのではなく、順番を踏んでいます。
結果
事例集では、生産計画を立てる時間が約40分から10分弱になり、
管理の手間は月10時間減ったとあります。売上は前年の同じ時期より78%増えたそうです。ひとりで抱えていた作業を、
ほかの人にも任せられるようになったそうです。
自社に置きかえるなら
ここからは私の考えですが、
見積・報告書・計画づくりのように「毎回、過去の資料を探して、足りない情報を聞き直して、一から書く」仕事は、
業種を問わずどの会社にもあります。AIに下準備を任せやすい仕事でもあります。ただ、この会社が道具の前に「何が必要か」をそろえたように、
先に業務を書き出しておかないと、
道具を入れても楽にはなりにくいと考えています。
困っていたこと
ラーメン店に食材を卸している、食品の卸売会社です。売上は右肩上がりで、お金まわりも安定していました。それでも、お客様がなぜ選んでくれているのかを、
自分たちの言葉で説明できていませんでした。社長は「味が安定していることを評価されている」と思っていたそうです。
やったこと
専門家と話を重ねて整理すると、
評価されていたのは商品そのものの品質でした。手間と時間をかけた製法と、
それを支える長年の仕入れルートです。
この価値を言葉にしたうえで、
お客様ごとに伝え方を分けました。
結果
事例集によると、
ほかの会社から共同商品の相談が来るようになり、
期間限定のはずの商品が定番になったそうです。飲食店向けでも知名度が上がりました。
自社に置きかえるなら
困っていたこと
長い歴史のある、手芸用品のメーカーです。海外にも販売を広げてきましたが、
安い類似品が多く、
素材の良さだけでは選ばれにくくなっていました。
やったこと
新製品のヒントは、社内にすでにありました。使う方たちが長年言っていた、使い心地についての要望です。技術の壁で形にできずにいたところを、
複数の支援機関が技術・特許・売り方を分担して支えました。
結果
事例集によると、
新製品は海外でも高い評価を受け、
累計の売上が前年同期比33%増えました。
自社に置きかえるなら
困っていたこと
地方の運送会社です。輸送から始めて、倉庫や物販などへ仕事を広げてきました。業績は戻り、社員も辞めにくい。それでも社長は「社員はこの方向に納得してくれているのか」と迷っていました。管理の仕事が社長と統括部長の2人に集中していたことも課題でした。
やったこと
国が用意している「会社の健康診断シート」も使って、
強みを棚卸ししました。出てきたのは「先に相手のためになることをする考え方」「業界の中にも外にも広いつながり」「社員が自分で考えて動く社風」の3つです。
この棚卸しの中で、
構想していた新しいサービスが具体的になりました。あわせて理念と方針をつくり直し、
毎回の会議でくり返し伝えています。統括部長の後を任せる人も2人育て始めました。
結果
事例集によると、
新しいサービスへの問い合わせも増え、
会社全体の売上高は相談前より27%増えました。
自社に置きかえるなら
困っていたこと
産地から仕入れた食品を通信販売している会社です。売上は毎年伸びていました。それでも利益が安定しません。新しいお客様を増やす方法は電話営業に頼り、
あとから入った社員の成績も伸び悩んでいました。
やったこと
財務の分析と現場の見学で診断すると、
長く買ってくださるお客様は増えている一方で、
新しいお客様が減っていました。仕入れ値の上昇も利益を圧迫していました。そこで、次のように変えています。
結果
事例集では、その後の2期で売上が続けて伸び、
営業利益も改善して黒字が安定したと書かれています。力のある創業メンバーを、
新しい事業に回せるようになったそうです。
自社に置きかえるなら
事例集に書かれていることではなく、
私が並べて読んで感じたことです。
1. 新しく足す前に、すでにあるものを見直した
工事ごとの数字、今いる会員、長年の製法、
お客様の要望、長年の信用。どれも、もともと会社の中にあったものです。
2. 先に「何を見るか」を決めて、道具はそのあと
数字を見る単位、計画に必要な情報のリスト、追う数字。どの会社も、道具や仕組みを入れる前に、
まず何を見るかを決めていました。
3. お客様の言葉や数字を、外の目で整理した
自分たちでは当たり前すぎて気づけない強みを、
専門家と話す中で言葉にしています。
帝国データバンクの調査(2026年7月・有効回答1万518社)では、
正社員が不足している企業が51.3%と、
4年続けて5割を超えています(出典:帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2026年7月)」)。人を増やして解決するのが難しい会社が多いなかで、
今いる人と今ある資産で何ができるかを考える場面は、
これから増えていくと思います。
公開事例の会社は製造業や運送業が中心ですが、
私がこれまで個別にご支援してきた講師・コンサルタントの方の事業でも、
根っこは同じでした。
どの方も、新しいお客様や新しい商品を足す前に、
すでにある読者・中身・経験に目を向けたところから変わっています。
事例を読んで「うちもやってみよう」と思ったら、
次の順番がおすすめです。
全部を一度にやる必要はありません。いちばん近い課題を1つ選ぶところからで十分です。
ここからは、事例集に書かれていることではなく、
私の考えです。
どの事例でも、公的機関の専門家は、
課題の整理から最初の打ち手まで丁寧に伴走しています。私ならその先で、次のことを一緒に進めたいと思います。
一度うまくいった見直しを、
その場かぎりで終わらせず、
次の利益を生み続ける形にする。それが、ストック経営で大事にしていることです。
新しい施策を足す前に、
すでに社内にある数字・お客様・技術を見直すところからです。たとえば、値段の中身を書き出す、
今のお客様に選んでいる理由を聞く、
1人に集中している仕事を書き出す、
のいずれか1つから始めると、
次にやることが見えてきます。
なります。業種が違っても、
「数字の見る単位を変える」「お客様の声から商品をつくる」「強みを言葉にする」といった考え方の部分はそのまま使えます。やり方そのものではなく、
何を見直したかに注目して読むのがおすすめです。
課題の整理や最初の打ち手は、
公的支援機関の無料相談で十分に進められることが多いです。そのうえで、見直した仕組みを会社に定着させたい、
毎月の数字づくりや実行まで伴走してほしい、
という段階で民間の支援を組み合わせると、
無駄がありません。
自社のどこに資産が眠っていて、何から手をつけるか。事例と手順を、特典(無料)にまとめました。
出典:公的支援機関の公開事例集に掲載された中小企業の支援事例(9社)より。会社が特定されないよう、
①の3社以外は事例のタイトルを載せていません。①の3社は個別の記事で紹介済みの事例です(「見積の精緻化と価格交渉を徹底し 3期連続赤字からのV字回復を実現」「30年据え置かれた運賃を適正価格へ 『原価の見える化』と『根拠ある交渉』で収益構造を刷新」「粘り強い価格交渉で工賃15.2%増を達成し 連続赤字決算から脱却」)。
売上と顧客価値顧客・信用・実績を活かして、売上と顧客価値を高める。
組織データ・専門知識・ノウハウを活かして、人とAIが成果を出せる組織をつくる。