ホーム › 読みもの › AIを導入しても社長の仕事が減らない3つの理由|中小企業のAI活用で先に見直すこと › 社員を増やす前に、確認・手戻り・二重入力を減らす|人手不足対策は採用だけじゃない

人手不足の対策は、採用だけではありません。社員を増やす前に、
社内の「確認・手戻り・二重入力」を減らします。この3つは、人数が増えるほど一緒に増えていく仕事です。先に減らしておくと、今いる人の時間が空き、
その時間を利益とお客様の満足を生む仕事に向けられます。
人が足りない。でも、募集を出しても思うように人が来ない。採用できても、教えているあいだに社長の仕事が止まる。
そんな状態が続いていないでしょうか。人が足りないなら採用する。とても自然な考え方です。ただ、人を増やす前に一度だけ、
社内の仕事の中身を見てほしいと思っています。
足りないのは、本当に「手」でしょうか。それとも、確認を待つ時間、やり直しの時間、
同じ数字を何度も入れる時間に、
今いる人の手が取られているのでしょうか。
この記事では、採用の前にできる人手不足の対策として、
確認・手戻り・二重入力の3つを減らす考え方と進め方を、
私の経験も交えてお伝えします。
大きく分けると、
「人を増やす」「外に任せる」「社内の仕事そのものを減らす」の3つです。この記事で扱うのは3つ目です。
人を採りにくい状態は、すぐには変わりそうにありません。帝国データバンクが2026年7月に行った調査(全国2万2,350社が対象、有効回答1万518社。大企業も含めた全業種の数字)では、
正社員が不足していると答えた企業は51.3%でした。(出典:帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2026年7月)」)
同じ帝国データバンクの集計では、
2026年4〜9月に「人手不足」が原因の倒産が225件あり、
年度上半期として4年連続で過去最多でした(負債1,000万円以上・法的整理による倒産が対象)。レポートでは、人件費の上昇を「価格転嫁や生産性向上によって」吸収できるかが分かれ目だと書かれています。(出典:帝国データバンク「人手不足倒産の動向調査(2026年度上半期)」)
数字だけを見ると怖くなりますが、裏を返せば、
今いる人で回せる量を増やせる会社は、
それだけで選べる打ち手が増えるということです。そのいちばん手前にあるのが、
確認・手戻り・二重入力を減らすことです。
どれも、それ自体はお客様に何も届けていないのに、
毎日の時間を取っていく仕事です。
確認:「これで進めていいですか?」を社長や上の人に聞き、
返事を待つ時間です。聞く側も、聞かれる側も手が止まります。
手戻り:やったあとで「そうじゃない」と言われ、
やり直す時間です。最初に何を基準に判断するかが渡っていないと起きます。
二重入力:同じお客様の情報や数字を、
別のシートや別のシステムに入れ直す時間です。転記のたびに、写し間違いを確かめる確認も増えます。
3つとも、人が1人増えるごとに増えていくのが特徴です。新しく入った人は、最初は確認が多くなります。基準を知らないので手戻りも出ます。入力する人が増えれば、
同じ数字が入る場所も増えていきます。
社長の手元に「最後の判断」が残ったままだと、
人を増やしても、
その人の仕事の最後が社長に戻ってくるからです。
コンサル事業で、
ライティングの添削や原稿づくり、
商品づくりのご相談などを一緒に提供できるよう、
外注さんを10名ほど集めてお願いしたことがあります。本当にいい方ばかりで、ありがたかったです。
でも、始めてみると、私の仕事はむしろ増えました。サポートをお願いしても、
書いていただいた原稿についても、
「これでいいか」と私に意見や添削を求められることが多くなったんです。人数は増えたのに、確認の行き先は私ひとりのまま。お金も時間もかかって、失敗でした。
原因は、外注さんではなく私の段取りでした。マニュアルを作らず、どこまで任せて、
どこから私が見るのか、
判断の基準を渡していなかった。だから、お願いした人数の分だけ、
確認が私に戻ってきたんです。
もうひとつ、人数とは関係なく詰まっていた経験もあります。2016年に起業して物販をしていた頃、
国内外の外注さん20名ほどにお願いしていて、
人数はちょうど回るだけいました。それでも、受注後の送金や在庫確認の依頼のやりとり、
発送後の到着確認などに、
気持ちがずっと持っていかれていました。どの業務も、最後のところで私の確認が必要だったからです。
人数を増やしたときも、
人数が足りていたときも、
詰まっていたのは同じ場所でした。確認の行き先が1か所に集まっていれば、
人数に関係なく、そこが詰まります。
確認・手戻り・二重入力の原因が「人数」ではなく、
「判断の基準が言葉になっていないこと」と「情報の置き場所が決まっていないこと」にあるからです。ここが変わらないまま人を足すと、
上の外注さん10名の話と同じことが起きます。
ツールも同じです。新しいシステムを入れても、
以前のシートも残したままにすると、
入力する場所が1つ増えるだけになります。この話は AIを入れても社長の仕事が減らない理由 でも詳しく書いています。
「誰が、どの基準で決めてよいか」と「どこから先は社長に戻すか」の線を、
先に決めます。
物販の頃、私はまとめ役の方に、
リサーチと買い付けの依頼をお任せしました。ただ、お金の判断は自分に残しました。実際に会ったことのない海外の方だったので、
そこは私でないと不安だったからです。線を引いてからは、仕事は楽になりました。
全部を任せたわけではありません。「ここまでは任せる」「ここからは私」を決めたことで、
確認が来る場所と来ない場所が分かれました。
確認を減らすときは、
次の2つを書き出すところから始めます。
前者を基準にして渡し、後者だけを社長に残します。社長が休む前に引いておく線については、
社長が3日休んでも仕事が進む会社の作り方 にまとめています。
仕事を渡すときに、
「何をするか」だけでなく「何を見て良し悪しを決めるか」まで渡します。
基準が言葉になっていないと、
任された人は分からないところで迷い、
聞きに来るか、自分の判断で進めてやり直しになりやすくなります。
決まった教え方で仕事を教わる人は、多くありません。経済産業研究所(RIETI)のコラムで紹介されているリクルートワークス研究所の調査(2024年、日本で働く30代・40代の雇用者3,683人が回答)では、
2023年の1年間に「一定の教育プログラムをもとに、上司や先輩から指導を受ける」形で教わった人は、
日本では12.0%でした。(出典:RIETI 岩本晃一「なぜ日本人の生産性はドイツ人の半分なのか(6)」2026年8月10日)
社長やベテラン社員の頭の中にある判断基準は、
会社の大事な資産です。私はこれを、会社に眠っている6つの経営資産のひとつ「人に蓄積された知識・経験」と呼んでいます。言葉にしてマニュアルや手順(「仕組み・ノウハウ」)に移すと、
手戻りが減るだけでなく、
次に入る人に教える時間も短くなります。言葉にする進め方は、
属人化をなくすには? で詳しく書いています。
同じ情報を入れる場所を1つに決め、
ほかの場所はそこから読む形にします。
お客様の情報、問い合わせ、見積、売上。こうした「蓄積されたデータ」が、
別々のシートや、
担当者のパソコンの中に散らばっている会社は少なくありません。入れる場所が増えるほど、転記と、その確認が増えます。
私の会社では、スプレッドシート、
配信やLPのツール、
Notion(社内のデータベース)、
AIをつないだことで、
数字を見て分析して直すところまでを、
私ひとりですぐに回せるようになりました。同じ数字をあちこちに入れ直す手間が減ると、
入力より、その数字を見て次の一手を考えることに時間を使えます。
二重入力を見つけるには、
まず「同じ数字が載っている表」を並べてみることです。お客様の名前が3つの表に出てくるなら、
入力も3回しています。どれを正にするかを決めるだけで、
手間は1回で済むようになります。
いきなり全部を変えるのではなく、次の順番で、
1つずつ進めます。
それでも足りない分を、採用で埋めます。仕事の中身を整えたあとに入った人は、
確認・手戻り・二重入力の少ない状態から始められるので、
早く力を出せます。
早く小さく試して、数字を見ながら直していく。これは私が事業を続けてきて、
ずっと大事にしていることです。
書き出して、振り分けて、
基準を決めるところまでは、社内でもできます。止まりやすいのは、そのあとです。日々の仕事に追われると、
決めた基準を回しながら直していくところが後回しになります。
私は、そのあとの部分を、
目標と成果指標を一緒に決めたうえで、
達成まで伴走しています。
私が目指しているのは、
データ・専門知識・ノウハウを活かして、
人とAIが成果を出せる組織をつくる。そのことです。判断の基準を言葉にし、
データの置き場所を決めておくのは、
その土台づくりにあたります。確認・手戻り・二重入力が減って空いた時間は、
お客様の声を聞くことや、商品を磨くこと、
次の一手を決めることに向けられます。人手不足の対策の本当の目的は、そこにあると思っています。
| 問い | 答え |
|---|---|
| 採用以外の人手不足対策は? | 確認・手戻り・二重入力を減らす |
| 人を増やしても忙しいのはなぜ? | 最後の判断が社長に戻ってくるから |
| 確認を減らすには? | 任せる線と、社長に戻す線を決める |
| 手戻りを減らすには? | 良し悪しを決める基準まで渡す |
| 二重入力を減らすには? | 入れる場所を1つに決める |
| 採用はいつ? | 仕事の中身を整えてから、足りない分を |
A.人数が少ない会社ほど、
確認の行き先が社長1人に集まりやすいです。
社員が数名でも、
すべての最後が社長の確認になっていれば、
社長の時間がそこで埋まります。まずは1週間、書き留めてみると、
どこに集まっているかが見えます。
A.入れる前に、どの表を正にするかと、
誰が何を決めるかを先に決めてください。
そこが決まらないまま入れると、
入力する場所が1つ増えるだけになりがちです。決めてからなら、
今あるシートのままで減らせることも多いです。
A.採用してください。ただ、仕事の中身を整えてからのほうが、
入った人が早く力を出せます。
確認・手戻り・二重入力が減った状態で迎えると、
教える時間も短くなります。採用と、仕事を整えることは、
どちらか一方ではなく順番の問題です。
組織データ・専門知識・ノウハウを活かして、人とAIが成果を出せる組織をつくる。