ホーム › 読みもの › 会社の強みの見つけ方|「うちには何もない」会社に眠っている6つの資産 › 暗黙知とは?中小企業で「社長の頭の中」を形式知にする方法

社員から相談されると、すぐに答えが出る。
お客様の話を聞けば、どこが問題か、だいたいわかる。
でも、
「なぜそう判断したんですか?」
と聞かれると、うまく説明できない。
「見ればわかる」
「なんとなく、そう思った」
「経験だとしか言えない」
そんな答えになってしまうことはないでしょうか。
判断が、体に染みついているからだと思います。
この記事では、その「言葉になっていない判断」を、
発信・商品・引き継ぎに使える言葉にするために、
私が考えている手順を紹介します。
A.最近の判断を1つずつ取り上げて「何を見て、なぜそう決め、何をやらなかったか」を聞き出し、
判断基準・順番・やらないことの3つに分けて書きます。
いきなり「自分のノウハウは何か」と考えても、
言葉は出てきません。
材料は、昨日や先週の判断です。1件ずつ振り返り、
できれば聞き手をつけて「なぜ」を重ねてもらう。集まったものを、1件1行で書き残していきます。
本人にとって当たり前すぎて、
言葉にしていない判断のしかたのことです。
私は会社に眠っている資産を、
顧客・取引先とのつながり、信用・実績、
顧客の声・成功事例、蓄積されたデータ、
仕組み・ノウハウ、
人に蓄積された知識・経験の6つに分けて見ています。暗黙知は、このうち最後の「人に蓄積された知識・経験」にあたります。
2026年5〜7月の有料企業診断で伺った、
経営コンサルティング事業の方がいました。
長年の経験で、
「どこが詰まっているか」
「何から直すべきか」
を、高い精度で判断できる方でした。
ただ、その判断基準は、ご本人の中に集中していました。社員が同じ判断をしようとしても、
参照できるものがありません。
診断でお伝えした方針は、
社長の知識・判断基準・事例を言葉とデータにして、
チームとAIが参照できる形にすることでした。
私は2019年から、
事業歴10〜40年の経営者の方と伴走してきました。年数が長い会社ほど、この判断の積み重ねも厚いと感じます。
判断を引き継ぐ相手を、
採用で増やすのが難しくなっているからです。
帝国データバンクの調査(2026年7月・全国1万518社が回答)では、
正社員が不足していると答えた企業が51.3%で、
5割を超えるのは4年連続です。
人を増やして任せる道が細くなれば、
今いる社員に任せていくしかありません。そのとき、社長の頭の中にある判断が言葉になっているかどうかで、
任せられる範囲が変わります。
言葉になった判断のしかたは、次の4つの材料になります。
| 使い道 | 例 |
|---|---|
| 発信 | 「私はこう考える」という記事やメルマガの中身 |
| 教材・商品 | 講座やサービスの骨組み |
| 提案の言葉 | お客様に価値を説明する言葉 |
| 社員への引き継ぎ | 「社長に聞かないとわからない」を減らす |
このうち「提案の言葉」の例を1つ紹介します。2019〜2025年の個別コンサルティングでのことです。
事業歴30年のピアノ講師・ビジネスコンサルの方は、
同じ商品を同じ価格で売り続けていて、
成約も安定していませんでした。値上げしたら選ばれなくなる、と思っていらっしゃいました。
一緒に見ていくと、中身は価格に見合っていて、
その価値が言葉になっていないだけでした。
そこで、商品も仕組みも変えず、
提供価値を言葉にし、
オファーと提案の順番を設計し直しました。そのうえで価格を2倍にして、成約しています。
※ 2019〜2025年に当社が行った個別コンサルティングでの実績です。同じ成果を保証するものではありません。
変えたのは、商品ではなく、
価値の伝え方と提案の順番でした。
「この商品で何が変わるのか」は、
ご本人の中にはありました。社長の判断と同じで、
当たり前すぎて言葉になっていなかったものです。このとき言葉にしたのは、その価値でした。
最近の判断を1つ取り上げて、
次の5つの質問に順番に答えていきます。
お客様への提案、断った仕事、値付けなど。大きな決断でなくて構いません。
どの数字、どんな言葉、どんな様子を見て決めたか。
決めた時点の理由を、まず1つ挙げます。結果が出たあとの理由ではありません。聞き手がいれば、
その理由にさらに「なぜ」を重ねてもらいます。
選ばなかった案と、その理由。
自分なら迷わないのに、
他の人なら迷いそうな所が、
言葉にする価値の高い所です。
これを5件、10件と重ねると、
同じ判断のしかたが何度も出てきます。
3つに分けて書きます。
YESとNOを分けているもの。
書き方の例:「見積は、お客様が目指している状態を伺えてから出す。伺えていないうちは、金額を出さない」
何を先に見て、何を後に見るか。
書き方の例:「新しい依頼が来たら、まず既存のお客様との関係を見て、次に利益、最後に作業量を見る」
経験から、避けていること。
書き方の例:「値引きを頼まれても、同じ内容のまま価格だけを下げることはしない」
どれも書き方を示すための例です。中身は、会社ごと、社長ごとにまったく違います。
特に「やらないこと」は見落とされがちです。でも私は、経験の差が出やすいのは、ここだと感じています。
おすすめは、「こういうときは、こうする。なぜなら」の一文で残すことです。
長い文章でまとめようとすると、
書くこと自体が重くなって続きません。1件1行で十分です。
私自身の例で、1つの判断を最初から最後まで通してみます。
物販の事業をしていた頃、
アメリカに住む外注の方に、
秘書のような役割をお願いしていました。その方がまとめ役になって、
外注チームへの依頼や、
リサーチ・買い付けの依頼を回してくださる形です。直接お会いしたことはありませんでした。
このとき、お金の判断だけは任せませんでした。5つの質問に当てはめると、こうなります。
| 質問 | 答え |
|---|---|
| 1.何を判断したか | まとめ役の方に、何を任せて何を残すか |
| 2.何を見ていたか | 相手が、直接会ったことのない海外の方だったこと |
| 3.なぜそう決めたか | お金のことは、自分でないと不安だったから |
| 4.何をやらなかったか | お金の判断まで含めて、全部を任せることはしなかった |
5つ目の「他の人ならどこでつまずくか」は、
この例では空欄のままです。当時、そこまで考えて書いたものがないからです。空欄の所は、次に誰かに任せるときに、
必ず聞かれる所でもあります。
3つの分け方でいえば、これは「やらないこと」です。1行にすると、こうなります。
当時は、この1行を書いていたわけではありません。いま振り返って言葉にすると、こうなります。仕事は、楽になりました。理由は気持ちの話です。それでも、書いておけば、
次に誰かに任せるときの「どこまで任せてよいか」の線になります。
本人にとって、当たり前だからです。
当たり前のことは、質問されないと出てきません。だから、聞き手が必要です。
聞き手は、答えを知っている人でなくて構いません。「なぜ」「ほかの案は?」「それをやらないのはなぜ?」と、
上の5つの質問を順番に聞いてくれれば十分です。
渡せます。
AIに渡すときは、役割を狭め、判断基準と、
やってはいけないことを書き添えます。具体的な方法は、こちらで扱っています。
→ 社長の暗黙知を、AIに渡す方法
AIを入れる前に、何を整理しておくかは、
こちらにまとめています。
「いいえ」が2つ以上あれば、
まずは今週の判断を1つ選んで、
5つの質問に答えてみてください。
1行ずつ書けても、それだけでは仕事は社長から離れません。
どの判断を、誰に、いつから渡すかを決めて、
実行計画に落とす。渡してみて、戻ってきた所を書き足す。ここまで進んで、ようやく社長の時間が空きはじめます。
私の仕事は、言葉になっていない判断がどこにあるかを一緒に見つけ、
目標と成果指標を一緒に決めて、
その達成に向けて伴走することです。
「社員に任せたいのに、結局自分に確認が戻ってくる」
「自分の経験を、発信や商品にうまく活かせていない」
「長年のノウハウが、自分の頭の中にしかない」
判断が社長に集まっている会社では、
社長の時間が確認で埋まり、
商品を磨く・お客様との関係を育てるといった仕事に手が回りにくくなります。
先にお伝えしておくと、
診断で暗黙知そのものが言葉になるわけではありません。社長の時間が取られている所も含めて、
会社のどこで利益が止まっていそうか、
見当をつけるためのものです。
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「人に蓄積された知識・経験」を含む、
会社にすでにある6つの経営資産と、
売上に変える順番をまとめています。
→ 営業現場の一次情報を、売上に活かす方法
お客様の言葉を要約せずに残し、
一語ずつ読むことで、
次に聞くことと直す場所を見つける方法を解説します。
A.任せられません。AIは、書かれていない判断基準を使うことができないからです。
AIに作業を渡す前に、何を見て、何を基準に、
何をやらないかを言葉にしておきます。言葉にする作業そのものを、
AIに質問役として手伝わせることはできます。
A.お願いできます。ただ、社員の立場からは「なぜ」を重ねて聞きにくいことがあります。
社長の判断に理由を問う質問は、遠慮が入りやすいものです。社員にお願いする場合は、
「答えに困ってもいいから、なぜを3回聞いてほしい」と最初に伝えておくと進みやすくなります。
A.伸ばしたい数字と今あるものを伺い、
どこに伸びしろがありそうかを整理して、
最初の一手を決めるところまでです。
その先、目標と成果指標を一緒に決めて、
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