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THEME 01|AI活用の前に、社長の仕事を整理する

経営・組織

権限委譲が進まない会社の共通点任せたのに社長に戻ってくる仕事を減らす

権限委譲が進まない会社の共通点|任せたのに社長に戻ってくる仕事を減らす

社員に仕事を任せた。

外注さんにもお願いしている。

AIも使い始めた。

それなのに、

「社長、これどうしますか?」
「この場合は、どう判断すればいいですか?」
「念のため、確認をお願いします」

と、毎日のように確認が戻ってくる。

気づけば、社長の一日の大半が、

誰かの判断を待つ時間と、答える時間

で埋まっている。

そんな状態になっていないでしょうか。

この記事では、権限委譲が進まない会社に共通していることと、
任せたのに社長に戻ってくる判断をどう渡していくのかを、
私自身の経験も交えて紹介します。


Q.権限委譲が進まない会社には、どんな共通点がありますか?

A.任せる範囲と判断の基準が、
社長の頭の中にしかないことです。作業は人やAIに渡せても、判断は社長に戻ってきます。そして社長の予定が、
そのまま会社の処理速度の上限になります。

  • 作業は外に出せても、判断は社長に戻ってくる
  • 社長が休むと、会社の仕事が止まる
  • 人やツールを足すほど、確認の入口が増える

解決の第一歩は、1週間だけ、
社長に来た「確認」を書き出してみることです。


任せたはずなのに、なぜ社長は楽にならないのですか?

手は空いても、気持ちが持っていかれるからです。

物販事業をしていた頃、
国内外の外注スタッフの方に、
多いときで20名ほど仕事をお願いしていました。

受注が入るたびに、流れはこうでした。

  • 外注さんに依頼する
  • 確認の結果をもらう
  • 買い付けをお願いする
  • 送金の連絡をもらう
  • 発送の連絡をもらう

これとは別に、秘書さんとのやりとりがあり、
出品をお願いしていた外注さんとのやりとりもありました。新しい方の採用も、そこに入っていました。

自分で作業をしているわけではないのに、
気持ちはずっと持っていかれていました。

在庫が見つからない。商品が破損して届いた。予定通りに届かない。

そういうときに最後に判断するのは、私でした。

手は空いても、頭は空かない。

当時のことは、こちらの記事にも書いています。

→ 外注さんにお願いして分かった。「人を増やせば楽になる」は半分だけ正しい


なぜ、権限委譲しても判断は社長に戻ってくるのですか?

判断の基準が、社長の頭の中にしかないからです。

私の場合、外注さんが自分で決められなかったのは、
能力の問題ではありませんでした。「どこまで自分で決めていいか」を、
私が決めていなかったからです。

そこで、やりとりのあった秘書さん(アメリカにお住まいの方)に、
「まとめ役」をお願いしました。

私が全員とやり取りするのではなく、

私 → まとめ役 → 各担当

という形に変えました。

まとめ役の方には、
リサーチと買い付けの依頼をお任せしました。そのうえで、

  • どこまでなら自分たちで決めていいか
  • どんなときだけ私に確認するか

を決めました。

一方で、お金の判断は任せませんでした。

まとめ役の方は海外にお住まいで、
実際にお会いしたことのない方でした。お金のことだけは、私が決めないと不安だったからです。

権限委譲は、全部を渡すことではありません。渡すものと、社長に残すものの線を引くことです。

そうして線を引いてから、仕事は楽になりました。


権限委譲で渡しているのは、会社のどの資産ですか?

6つの経営資産のうち、「人に蓄積された知識・経験」です。

ストック経営では、
会社にすでにあるものを6つの経営資産として見ています。顧客・取引先とのつながり、信用・実績、
顧客の声・成功事例、蓄積されたデータ、
仕組み・ノウハウ、
人に蓄積された知識・経験の6つです。

社長やベテラン社員の判断基準・現場の知見・勘は、
会社の大きな資産です。

ただ、頭の中にあるうちは、その人がいないと使えません。

企業診断で伺った経営コンサルティングの会社では、

「どこが詰まっているか」「何から直すべきか」を見抜く力

が、社長本人にだけありました。

長年の経験から、高い精度で判断できる。それは会社の強みです。

でも同時に、社長がいないと、
その強みを使えない
状態でもありました。

社長にとって当たり前の判断ほど、言葉になっていません。そして、言葉になっていないものは、
人にもAIにも渡せません。

判断の基準を書き出すと、
それは「仕組み・ノウハウ」という別の資産に変わります。

権限委譲とは、作業を渡すことというより、
社長の頭の中にある判断を、
会社の仕組みに移していくことです。


なぜツール導入や外注だけでは、権限委譲は進まないのですか?

ツールや外注が引き受けるのは「作業」で、
「判断の基準」までは引き受けないからです。

  • チャットツールを入れると、確認が届くのは速くなります。でも、確認の数は減りません
  • 外注さんを増やすと、作業は減ります。でも、確認の入口が人数分増えます
  • AIを入れても、基準を渡していなければ、
    社長が毎回指示を書くことになります

私が物販で経験したのは、まさに2つ目でした。人が増えるほど、
依頼・確認・連絡のやりとりも増えていきます。

先に「何を渡して、何を残すか」を決めてから、
ツールや人を足す。この順番が逆になると、
仕事を減らすための投資で、
社長の仕事が増えることがあります。

このあたりは、AIを入れても社長の仕事が減らない理由にも書いています。


判断が社長に集まっているかは、どう確かめればいいですか?

1週間だけ、社長に来た「確認」を書き出してみます。

チャット、メール、口頭。どこから来た確認でも構いません。

書き出したら、次の3つに印をつけます。

① 前にも同じことを聞かれた

毎回、同じ答えになるもの。

→ ルールとして書けば、次から渡せます。

② 社長でなくても答えられた

基準さえあれば、社員やAIでも決められたもの。

→ 判断基準を書けば、渡せます。

③ 本当に社長が決めるべきだった

何を伸ばすか、誰と組むか、どこに投資するか。

→ これは社長に残します。

印をつけたら、それぞれ何件あったかを数えます。

①と②が多い種類から渡すと、
社長の手元に戻ってくる確認が一番減りやすい。感覚ではなく、件数で渡す順番を決めます。


社長以外でも判断できるようにする4つの手順は?

判断を全部渡すのではなく、種類に分けて、
渡せるものから渡します。

私は、次の4つの手順で進めています。

  1. 判断を種類に分ける:毎回同じ答えになるもの/ケースで変わるもの/社長にしか決められないもの
  2. 任せる範囲を書く:金額・相手・内容で、
    どこまでなら決めていいか
  3. 例外だけ社長へ:どんなときだけ確認するかを決める
  4. 判断の理由も残す:なぜそう決めたかを一言添えると、
    次から似た判断ができる

2の「金額」は、線を引きやすい項目です。物販の頃の私は、作業や依頼は任せて、
お金の判断は全部自分に残していました。「◯万円までは任せる、それを超えたら社長へ」のように、
会社の規模や状況によって線の位置は変わります。

人に渡すときも、AIに渡すときも、やることは同じです。


判断を渡すと、社長の時間は何に戻せますか?

社長が集中すべき5つの仕事のうち、
「戦略・優先順位を決める」「商品・顧客価値を磨く」に戻せます。

5つの仕事とは、戦略・優先順位を決める、
商品・顧客価値を磨く、集客・営業を設計する、
既存顧客との関係を育てる、
人・AI・仕組みに振り分ける、の5つです。

企業診断で伺った語学教育の会社では、
商品づくり・集客・発信・数字の確認・社員教育まで、
社長がひとりで兼ねていました。

毎日の仕事に追われて、
先のことを考える時間が足りない状態でした。

このとき立てた方針は、次のようなものです。

  • 調査・企画の下準備・分析・議事録は、AIへ渡す
  • 社員には、判断していい範囲を書いて渡す
  • 社長は、新しい事業・人の育成・経営の判断へ時間を戻す

そして、何を人に渡し、
何をAIや仕組みに渡し、
何を社長に残すかを決めること自体が、
5つの仕事の1つ「人・AI・仕組みに振り分ける」です。

権限委譲は、社長の仕事を減らすことではなく、
社長にしかできない仕事に、
時間を戻すこと
です。


「社長がいなくても回る会社」は、社長が要らない会社ですか?

違います。

企業診断のヒアリングでは、

「社長がいなくても回る組織にしたい」

という言葉が、複数の会社で出てきました。

ただ、

  • 何を伸ばすか
  • 誰と組むか
  • どのお客様を大事にするか

は、やはり社長が決めることです。

私が目指しているのは、

社長しか判断できない会社から、
社長にしかできない判断だけが社長に残る会社へ

変わっていくことです。


判断が社長に集まっていないか、確かめる5つの質問

  1. 社長が1週間休んだら、止まる仕事はどれか?
  2. 同じ質問に、社長が何度も答えていないか?
  3. 社員や外注さんに、
    「どこまで決めていいか」を伝えているか?
  4. 社長にしか分からない判断基準が、どこかに書かれているか?
  5. 社長の一日のうち、判断を待たれている時間はどのくらいか?

この記事のまとめ

項目考え方
進まない理由判断の基準が社長の頭の中だけにある
渡す資産人に蓄積された知識・経験を、仕組み・ノウハウに
確かめ方1週間の確認を書き出し、件数を数える
渡す順番同じ答えになるもの→基準で決まるもの
社長に残す線を超える金額・何を伸ばすか・誰と組むか
戻る仕事戦略・優先順位、商品・顧客価値

よくある質問

権限委譲しても、結局社長に確認が戻ってくるのはなぜですか?

A.どこまで自分で決めていいかが、
言葉になっていないからです。

金額・相手・内容で任せる範囲を書き、
例外のときだけ社長に確認する形にすると、
戻ってくる確認は減らしやすくなります。

社長の判断は、すべて人やAIに渡すべきですか?

A.いいえ。毎回同じ答えになる判断から渡し、
決めた金額を超える判断や、
何を伸ばすか・誰と組むかのような判断は社長に残します。

目指すのは社長が不要な会社ではなく、
社長にしかできない判断だけが社長に残る会社です。

どの判断から渡せばいいか分からないときは、どうすればいいですか?

A.1週間だけ、社長に来た確認を書き出してみてください。

「前にも同じことを聞かれた」「社長でなくても答えられた」ものに印をつけて件数を数えると、
最初に渡せる判断が見えてきます。


自社のどこで、判断が社長に止まっているか

手順そのものは、ここに書いたとおりです。

それでも進まないのは、
「書き出す」「分ける」「範囲を決める」が、
毎日の確認対応の後回しになるからだと感じています。確認に追われている社長ほど、
確認を減らす作業に手が回りません。

私は、御社のどこに判断が集まっているか、
どこに資産が眠っているかを一緒に見つけたうえで、
目標と成果指標を一緒に決め、
その達成に向けて伴走しています。

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